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EQUINOX

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Style: Ayano Santanda / Model, Poetry Reading: Takahiro Yagvchi

 父の納骨が三月三十一日と決まったのは、漸く二月のことだった。

 焼き場から帰る車中膝に抱えた骨壷は七月の外気にも増して炉の熱を帯び温かく、落とすまいと胸に寄せると丁度、首の座らない赤ん坊のように感じられた。帰宅するなり母は予め決めていたのか和室の出窓にそれを置き、それから数日はひとりその収まりの悪さに腕組みしていたそうだが、日毎庭の草花やらたまに贈られてくる献花を傍に供えたりするうち、すっかり祭壇様にしてしまった。

 そのため納骨は延びに延びたわけだが、気丈な人の線香をあげる背中がふと心許なく見えたのが久しぶりに実家へ寄った二月のこと、こちらを振り返るともなく暖かくなる頃にしようと思うのと言うので、三月三十一日と漸く日取りが決まったのだった。

 和室の祭壇には私が撮った父の写真だけが残った。ともすると何か話し出しそうだったその顔はもう、肉を剥ぎ取られた骨のように見えた。

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